Hana-Mushiro
幼い頃、落ちた椿の花びらをちぎっては、ままごとの材料にしていた。
瑞々しい花びらをむしり取ることの残酷さに後ろめたさを感じつつも、その山に顔を埋める心地よさは罪悪感に勝るものであった。
椿は、六分咲き程度開花すると花を落とす。水も光も不要であると言わんばかりに。
土にそのまま活けたような落椿は、やがてほどけるように花芯を露出し、土に溶けてゆく。
鮮やかな椿が褐色に変化してゆくそのすぐ隣では、春を待ちわびたように若葉が次々と芽を出す。
不釣り合いなほどのコントラストが、冬の終わりを告げる。